イングランド南西部のサマセット地方に伝わる民謡をもとに作られた、イギリスの作曲家グスターヴ・ホルスト(1874–1934)のサマセット狂詩曲。 オーボエ・ダモーレによるソロが郷愁を誘う。 オーボエ・ダモーレはオーボエの仲間だが、オーケストラでもほとんど使われることがないので、実際に聴くことの出来るこのコンサートは、貴重な機会といえよう。 古典派を代表するオーストリアの大作曲家フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732–1809)。 イギリスでもたいへんに愛されていた彼が、ロンドン滞在中に作曲した交響曲第103番は、ティンパニの長い連打があることから「太鼓連打」という愛称がある。 晩年、イギリス準男爵に叙されたサー・エドワード・ウィリアム・エルガー(1857–1934)が作曲したエニグマ変奏曲。 妻のアリスを喜ばせようと、友人たちの特徴を捉えて肖像画を描くように旋律を変奏させていった。 第1変奏は「C.A.E.」。 愛妻キャロライン・アリス・エルガー(CarolineAliceElgar)の頭文字となっている。 この演奏会ではイギリスにちなんだ曲を取り上げるが、ハイドンはともかく、ホルストもエルガーも、モーツァルトやベートーヴェンやチャイコフスキーと違って、誰もがその名を知っている……という存在ではない。 音楽も、艶やかな優雅さとか、厳かな重厚感とか、ほとばしる情熱とかいった、即座に人を惹きつける特徴を持った曲ではないかもしれない。 しかし、練習していくなかで、知れば知るほど感じるのは、その味わい深さである。 一日が無事に終わって安堵したり、友人や家族や恋人たちと語らったり、なにげない日常の中でふと感じる、小さいけれど温かく確かな幸せを思い起こさせる。